来年2月のブロードウェイ公演へ向けたプレビュー公演の初日を迎えたミュージカル「アナと雪の女王」。
コロラド州デンバーのビューエル劇場にて10月1日まで上演です。
8月17日に初演を迎え、次々と観劇した人のレビューが公開されはじめています。
期待値の高い作品ですが、鑑賞者からは賛否両論ありました。
そこで、今回はミュージカル「アナと雪の女王」が面白い理由、つまらない理由を鑑賞者のレビュー(感想・評判)からまとめてご紹介します。
>2021年6月上演の劇団四季「アナと雪の女王」も観劇しましたので、その感想も併せてお伝えします。
衣装・コスチュームが公開
公演初日を迎える2017年8月17日、ミュージカル版の衣装が動画で公開されました。
@EW
この写真は8月17日から始まるプレビュー公演のバックステージを写したものです。エンターテイメントウィークリーより公開されました。
動画に登場するのはエルサ役のケイシー・レヴィ、アナ役のパッティ・ムリン、クリストフ役のジェラニ・アラジン、ハンス役のジョン・リドル。
衣装はトニー賞やローレンス・オリヴィエ賞の獲得経験を持つクリストファー・オラムのデザイン。舞台美術もクリストファー・オラムが手がけています。
ミュージカル版「アナと雪の女王」の評判・評価
良かった点
「レット・イット・ゴー」
やはり「レット・イット・ゴー」は素晴らしかったです。まだプレ公演ですが、映画で最初に観たあのシーンがステージ上に蘇っていました。
この曲はミュージカルの中でも1幕最後の曲としては3本の指に入るくらい素晴らしい曲だと思います(「Defying Gravity」「One Day More」が後の2本)。
もちろん、イディナ・メンゼル版を思い出さずにはいられず、実際は客席の子供たちの半分が一緒に口ずさんでいましたが、エルサ役のケイシー・レヴィは完璧にこの曲を歌いこなしていました。
「レット・イット・ゴー」のシーンを観るだけでチケット代の元は取れる作品。残りのシーンはボーナスみたいなものです。
スヴェン
スヴェンが登場するシーンは全て彼が独壇場です。
映画と比べると、本物のトナカイに近い演出です。アンドリュー・ピロジーがブロードウェイ版「ライオンキング」で得たスキルが生かされています。
トロールの代わりとなる新しいキャラクター
トロールの代わりとして新しく創られたキャラクターたちがいます。
彼らは尾の生えた野性的な人間として描かれています。厚い服装をしていてトロールとはまた別の民話的なキャラクターです。
ストーリーに見事に馴染み、トロールの代わりを十分に果たしていました。
アナとエルサ
子供時代から大人になるまで。4人のアナとエルサが全員素敵な演技を見せてくれました。
追加曲「Hygge(ヒュッゲ)」
追加曲の中で最も素晴らしい曲で、2幕のオープニングに使用されています。新曲「Hygge(ヒュッゲ)」ではロケットダンスが披露されます。
映画から馴染みの曲があまりない2幕で華を添えてくれる最高のソングです。
舞台効果
「レット・イット・ゴー」が歌われる時の、舞台装置やプロジェクターの映像による演出は圧巻。
ブロードウェイ版ではさらに素晴らしい舞台演出になっていることでしょう。
改善点
オラフのキャラクター像
これにはがっかりしました。なぜなら、オラフはディズニーの中でも特に秀逸なキャラクターで、ステージ上でも同じように描かれると思っていたからです。
しかし、ジョシュ・ギャッドが演じたオラフとはかけ離れたキャラクターになっていました。これに関してはブロードウェイ公演で修正されることを期待しています。
振付・歌う際の演出
名曲を歌うだけではミュージカルの場合成功とは呼べません。確かに「レット・イット・ゴー」は舞台装置を含め豪華に演出されていますが、例えば「Love is an Open Door」では広い舞台上にアナとハンスの二人しかいなくて、とても舞台上の空いたスペースが目立ってしまっています。
曲だけに頼るのではなく、振り付けや演出によるシーンの豪華さもブロードウェイに向け必要だと思います。
舞台装置のミス
1幕の最初のシーンで、舞台装置の機械的なミスがありセットがステージ上に出てきませんでした。二人の幼い子役(アナとエルサ)はあたかもセットがあるように演じましたが、次の曲ではセットが重要な役割を持つのでショーが一旦中断されました。
他のシーンでもタイミングなどのトラブルがいくつかあり、またドライアイスの多さも不自然だったりと本公演に向けテクニカルな部分での修正が必要な箇所が見られました。
第2幕のスローリーな展開
とてもスローに話が進んでゆきます。また2幕に追加される新曲は、正直映画と比べて優れているとは言い難いものがあります。
2幕には、アナとエルサそれぞれに「True Love」そして「Monster」という二人を象徴する楽曲が追加されています。
しかし、どちらの曲もスローリーなバラードソングで、観客の大半を占める子供たちには少し退屈かもしれません。
「When Everything Falls to Pieces」は明るい陽気な曲ですが、その曲が終わるとまたスローなストーリーと音楽に戻ってゆきます。
悪かった点
ストーリーの脈絡に不備がある
観客の中で映画版を見たことがない人はほとんどいません。しかし、映画版を見たことがない人は、ミュージカルで初めて「アナと雪の女王」のストーリーを知るわけです。
アナとエルサの両親の葬儀も脈絡なく突然行われ、どうして亡くなったのかの具体的な説明に欠けています。
また、アナがお城の牢に閉じ込められ、オラフが鍵のかけられた牢を開ける時、「クリストフがお城へ戻ってくるのを見た」とアナに語ります。クリストフがなぜ戻ってくるのか、その決断をしたシーンが重要なのに描かれることなくオラフのセリフに集約されてしまっています。
「なぜこうなるの?」と思う箇所が正直いくつかあったのが残念です。
※他には悪役(ヴィランズ)が弱いといった指摘もありました。
劇団四季版「アナと雪の女王」を観劇しての本音の感想
さて、2021年6月に日本初演を迎えたアナ雪、私も早速観劇してきました。
この記事をご覧の方はどちらかというと「本音の感想」を求めているかと思いますので、オブラートに包むことなく、バイアスをかけることもく、本当にどう思ったのかをお伝えします。
ストーリーの展開が急すぎる
先ほどお伝えした海外での公演を見た方の批評で、ストーリーの脈絡に不備があるという意見がありました。
観客の中で映画版を見たことがない人はほとんどいません。しかし、映画版を見たことがない人は、ミュージカルで初めて「アナと雪の女王」のストーリーを知るわけです。
アナとエルサの両親の葬儀も脈絡なく突然行われ、どうして亡くなったのかの具体的な説明に欠けています。
・アナとエルサの両親の葬儀も脈絡なく突然行われ、どうして亡くなったのかの具体的な説明に欠けています。
こちらはまさに、そうです。両親が亡くなったことについては、アニメ版や「アナと雪の女王2」でも描かれているので、その理由について知っている方も多いと思いますが、それにしても結構急な描かれ方でした。
また、一番急に感じたのはハンスが急に正体を明かすところです。ここの展開が急でした。
TDLのショーを見ているような感覚
全体的にスピード感があって、まるでショーのようでした。
心情を描くというよりは、素晴らしい歌唱や、きらびやかでマジックのような舞台セットを見せられていた感覚があります。
ディズニーの年パスが早く復活しないかなと心待ちになった
素晴らしい歌唱はまだしも、きらびやかで魔法のような舞台セットはTDLのショーやアトラクションでも見られます。これがディズニーの素晴らしさだよな、、、と最近TDLに訪れていないこともあり、再認識しました。いつの間にか、「やっぱディズニーマジック最高、年パス再開したら必ず買おう、そして行こう。」という心持になっていました。
ただ、ミュージカル版アナ雪に対しては、正直私は劇団四季の演者さんのファンではないので、すばらしいセットを見るならTDLで良いかなという気持ちになってしまいました。
舞台セットに注力しすぎた感は、余分な演出にも表れていたと思う
「とびら開けて」は有名なアナとハンスの場面ですが、アクロバティックな振付が付いていました。正直、ここにアクロバティックを持ってきたことの不自然さを感じてしまいました、余分な感じというのでしょうか。
これは完全な私の感想・考えなのですが、舞台セットがあまりにも豪華・きらびやかなのに対して、人の動きの多い作品ではないため、そこのバランスを保とうとしたのかと思いました。
でもここで、こんなにアナを頑張らせる必要あるか?と思ってしまいました。
余分な日本語歌詞にも引っかかった
歌詞はアニメ版と同じ方が翻訳されています(四季版アラジンも同じ方です)。
既存曲は、アニメ版の歌詞を基本にしながらも、少し変えたり、そこに付け足すような翻訳の仕方をしています。
その付け足した歌詞が正直余計に感じました。
例えば、
「キレ、コク、旨さ」という歌詞があったとしましょう。
今回の四季版アナ雪の歌詞は、同じメロディーなのに
「キレ、コク、そして旨さ」
のように、元の歌詞は残しながら付け足す感じなので、メロディーに対して余分な歌詞があり、すごく不自然に感じてしまいました。
「キレ、コク、旨さ」で良くない?なんのために「『そして』足した?」みたいな。
ミュージカル版「アナと雪の女王」はビューエル劇場での公演を10月1日に終え、来年2月22日よりセント・ジェームズ劇場にてブロードウェイのプレビュー初日を迎えます。
日本公演はまだ決定していませんが、今まで通り1〜3年後には劇団四季で上演される可能性が高いです。
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