宝塚大劇場にて星組公演「ANOTHER WORLD」「Killer Rouge(キラー ルージュ)」を観てきました。そこで、今回はレビュー「Killer Rouge(キラー ルージュ)」の感想を本音でご紹介します。
本音で語っているので、正直ファンからすれば辛口な部分も多々あります。勇気のある方は、ぜひ最後までお読みください。
ちなみに、タイトルは「絶対に有沙瞳をトップ娘役にしたいと思った」です。
【公演情報】
星組 RAKUGO MUSICAL「ANOTHER WORLD」/タカラヅカ・ワンダーステージ「Killer Rouge(キラー ルージュ)」
■宝塚大劇場:~
■東京宝塚劇場:~
目次
Killer Rouge(キラー ルージュ)を一言で
作・演出が「La Esmeralda」の齋藤吉正だけあって、最初から最後までにぎやかなショーでした。アジア版「La Esmeralda」。
良いレビューの条件とは
「良いレビューの条件」とは一体なんでしょうか。人気が出るディズニーのパレードやショー。評価の高い宝塚のレビュー、最近では「THE ENTERTAINER!」「SUPER VOYAGER!」など。
良いレビューやショーには、「単調にならないためのシーンの組み合わせ」「良質な音楽とダンス、それを表現できる役者」「軸となるストーリーとテーマ」など、様々な要素が必要です。
数学のように答えがあるのが望ましいですが、芸術やエンタメの世界に明確な答えはありません。でも極端に言えば、観客を「飽きさせない」というのが「良いレビューやミュージカル」と言われるための答えだと思います。
飽きさせないというのは、「単調にならない」とも言えます。
レビューにおけるストーリーとテーマ
野口幸作演出「THE ENTERTAINER!」「SUPER VOYAGER!」であれば、ストーリーはトップの成長ですよね。
「THE ENTERTAINER!」であれば、一流のエンターテイナーになることであり、「SUPER VOYAGER!」は望海風斗がトップになるまでの成長と船出。テーマはエンターテイメントの華やかさ、そして船旅の表現でしょうか。
このストーリーとテーマ、そして組の特徴をマッチングさせるのが演出家の腕の見せ所。
実力あるトップがいる組の場合、野口演出のようにトップを全面的に押し出せば良いですし。そうでない場合は、その他のメンバーとのバリエーションで攻めたレビューにすれば良いと思います。
野口さんは、トップの実力を成長というストーリーで最大限に活かしながらも、その他のメンバーの良さを引き出して、組の特色を最大限に生かしたバラエティ豊かなショーに仕上げてきます。レビュー演出家としての才能は高いと思います。
軸となるストーリーで、観客を終わりまでドキドキさせ、飽きさせること一切なく。組のメンバーそれぞれの特色を生かし、また様々な舞台の要素で観客を驚きで満ちあふれさせる。
これができれば私の中では「良いレビューだった」となります。
Killer Rougeとは一体なんだったのか謎のまま終わった
「Killer Rouge(キラー ルージュ)」に話を戻します。各シーンの曲やダンスは良かったです。このにぎやかさが嫌いなわけでもない。それでも、常に同じトーン、トーンが一緒なので、組のメンバーそれぞれの特色を生かすような演出もほとんどない。また、軸となるストーリーもないので、どうしても最初から最後まで「単調さ」を感じてしまいます。レビューってただ単にずっとにぎやかなだけでは観客も飽きてしまうんですね。
そもそも、Killer Rougeの説明に「紅ゆずるのエンターテイナーとしての多彩な魅力に迫る」と書かれていますが、肝心の紅ゆずるの魅力を引き出すシーンが全部同じようなトーンで進んでゆきます。「これも私が知っている紅ゆずるだよね、これも私が知っている紅ゆずる..で?」となるのです。
その上、「トップの成長」といった紅ゆずるファンを感動で満ちあふれさせるようなストーリーは全くありません。Killer Rougeとはいったい何だったのでしょうか...
私が考える紅ゆずるの魅力とは
個人的に、私が好きな紅ゆずるのレビューやダンスシーンは「スカーレット・ピンパーネル」のパレード、「ガイズ&ドールズ」のLUCK BE A LADYのダンスシーン。歌であれば「花夢幻」。
紅ゆずるって、激しく踊ったり歌わせたり会話させるよりも、シャンソンや、ダンスでアダルティな面を出したほうが、彼女の良さが出ます。スカピンがとても良かったのは、アダルティなパーシー演じる紅ゆずるが、緊張した社会の中でコメディセンスを発揮したから。緊張と緩和というメリハリがあったから。これは間違いない。
そもそも、滑舌が良い方ではないので、どちらかと言えば、ミュージカルでは口数少なく、レビューではダンス中心かつシャンソンのような外国の曲を歌わせた方が魅力が出るかと思います。
特に、ミュージカル「ANOTHER WORLD」は紅ゆずるの関西人としてのノリが活きた作品でした。ただ同時に、まくしたてるセリフは、滑舌のせいで明瞭には聞こえず、完全にノリで笑いをとってました。宝塚とは思えないノリでのりきっただけに、レビューで紅ゆずるにスポットライトを当てるなら、「ミュージカルでは思いもしなかった紅ゆずるの魅力に迫る」というテーマで、紅ゆずるのキリッと踊るダンスシーンや、シャンソン、日本の歌謡曲などで、中性的かつアダルティな魅力を見たかった。
見た目は全然違うけれども、根底ではミュージカル「ANOTHER WORLD」も、レビュー「Killer Rouge(キラー ルージュ)」もまくしたてるような似たトーンの作品です。味は似ています。
ストーリーテラーに綺咲愛里は...
ブログラムのレビュー第1場最初に綺咲愛里と書かれており、「SUPER VOYAGER!の真彩希帆そのままに、ストーリーテラーとして綺咲愛里に最初歌わせるのかな...?」と思っていたら、予想通りの展開が。
綺咲愛里の魅力は歌ではないですよね。歌うと全ての声が変に震え、何を言っているのか聞き取りずらくなってしまいます。ここは2番手礼真琴にすれば良かったのでしょう。最初でつまづくと、なかなか回収は難しいのはどんな作品でも一緒。「とても重要なところなのにな」と思いました。
「Killer Rouge(キラー ルージュ)」では、綺咲愛里のシーンは全体を通してもかっこよかったり、可愛いシーンが多いです。「紅頭巾CHANG」もキュートでわくわくする役なのですが、可愛さは表現できても歌の出来が頭に残ってしまいます。キメるべきところがキメきれない、これも「Killer Rouge(キラー ルージュ)」の出来にすごく影響している気がします。
有沙瞳と礼真琴が見事に埋まらないところを回収してゆく
「ANOTHER WORLD」「Killer Rouge(キラー ルージュ)」でトップの埋まらない部分を回収してゆく礼真琴と有沙瞳。観終わる頃には、この二人の献身さに感動し、勝手に恋に落ちています。
特に、有沙瞳です。私は観劇中に「有紗瞳を絶対にトップ娘役にしてあげたい」と思いました。
雪組からの左遷と陰で言われ、礼真琴と合わないといった声も聞こえますが実力は申し分ありません。何より、トップ娘役の出来ない部分を見事に回収してゆく、これだけ献身性のある娘役なら、誰が見ても何が何でも応援したくなります。
特に、こときほがあり得なくなった今。礼真琴に完璧にふさわしい娘役はどの組探してもいないでしょう。となれば、礼真琴の魅力を引き出し、どこまでもお供するような献身性のある娘役が最適だと思います。
宇宙からやってきたような天才礼真琴の相手役に有沙瞳を。
瀬央ゆりあへの期待感
今年になって評価が格段に上がっている瀬央ゆりあ。それも当然です、「ドクトル・ジバゴ」の演技は本当に最高でしたから。今回のレビューでも、ソロで歌うシーンがいつもより増えています。
歌に関しては、「まだまだ伸ばすところがあるな...」と思いました。やっぱりレビューのソロって特別な場ですからね。それに、星組の同期には礼真琴もいます。いやがおうでも、礼真琴の歌は頭の中から離れません。比較してしまいますよ。
それでも、今後礼真琴がトップに就任したら羽根を背負うこともありそうだなと思い、今後の期待が高まりました。
北翔海莉がいた頃の、星組全盛期とも言える時期に戻るには、3番手やそれ以外のメンバーの活躍が必須です。
個人的に瀬央ゆりあにはかなり期待しています。
唯一レビューでとても好きだったシーン:104期ラインダンスからの礼真琴
同じようなトーンで、ずっと辛いものを食べ続けているような感覚のレビューです。しかし104期の桜をテーマにしたラインダンスは、まるで途中ではさむ胡麻団子のように、忘れかけていたショーの甘美さを思い出させてくれました。
ケツメイシ「さくら」、森山直太朗「さくら」、コブクロ「桜」など、桜にまつわる日本の名曲がアレンジされ次々とバックで流れます。いや、本当に良いラインダンスでした。
あと104期には綺咲愛里の妹である美里玲菜がいますが、初舞台とかぶるように星組公演の時期合わせてきたのでしょうか?
また、ラインダンスのあとの、礼真琴のダンスと歌に感動したのは言うまでもありません。美味しいものは、いつ食べても料理の奥深さを思い出させてくれるものです。
104期ラインダンスからの礼真琴の流れがこのレビューの中で私は一番好きでした。