アディナ・ピンティリエ監督の映画「タッチ・ミー・ノット/Touch Me Not」がベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞しました。
2018年度の映画界を旋風する可能性を持つ作品です。
日本での公開可能性も含め、映画「タッチ・ミー・ノット/Touch Me Not」についてご紹介します。
タッチ・ミー・ノット/Touch Me Not
ローマ出身のアディナ・ピンティリエ監督作「タッチ・ミー・ノット/Touch Me Not」は、愛情表現(性的行為含む)に恐れを抱く女性を主人公にした作品です。
今週の土曜日にベルリン国際映画祭の金熊賞が発表され、見事に同賞を獲得しました。
コンペティションにはウェス・アンダーソン最新作「犬ヶ島」なども候補に上がっており、激戦を争っての受賞であることがわかります。
しかし、事前の評判では「タッチ・ミー・ノット/Touch Me Not」は大穴。アディナ・ピンティリエ自身も「この結果を予想していなかった」と答えるほど。
一方で、美の認知に関する映画のテーマに対して「とても重要なことです」と付け加えています。
あらすじ
「どうやって私を愛していたか教えて、愛し方を理解したいの」
個々の愛情表現に対して監督の考え・物語を用いて深く追求した作品。リアリティとフィクションの境界を流動的に動く。
「タッチ・ミー・ノット/Touch Me Not」は主要な登場人物であるローラ、トマス、クリスチャンの感情の旅に従うことで、彼らの人生から深い共感と洞察を得ることができる。
親密さ・愛情を渇望しながらも、それを恐れる。彼らは、古いしきたり、防衛本能、タブーを乗り越え、自由を得るようとする。
「タッチ・ミー・ノット/Touch Me Not」は最も予期しない方法で愛情表現を知り、そして自分自身を失うことなく他者を愛することを描いた作品。
(ベルリン国際映画祭での公式説明を引用)
アディナ・ピンティリエ
ブカベストにあるカラジアーレ大学のシアトリカル・アーツ&シネママトグラフィを2008年に卒業。
ドイツで開催されるオーバーハウゼン国際短編映画祭では2013年に「Diary#2」でゾンタ賞を受賞。
ピンティリエ監督の作品は、フィクション、ドキュメンタリー、ファインアートの境界に目を向けたものが多いです。作品では、個性的な視覚表現。視覚言語へのチャレンジ精神。人間精神への妥協なき探究という特徴があります。
2010年以降はブカレスト国際映画祭のキュレーターを務めています。
主な作品
- Don't Get Me Wrong(2007年)
- Sandpit #186(2008年)
- Oxygen(2013年)
- Diary #2(2013年)
- Touch Me Not(2018年)
スタッフ
- 脚本・監督:アディナ・ピンティリエ
- 撮影監督:ジョージ・チッパー
- 編集:アディナ・ピンティリエ
- 音楽:イヴォ・パウノフ
- 音響デザイン:ドミニク・ドレジー
- 美術:アドリアン・クリステア
- 衣装:マリア・ピテア
- メイクアップ:ロアーナ・コヴァリ
キャスト
- ローラ・ベンソン
- トーマス・レマルキス
- クリスチャン・バイエルライン
- グリット・アーレマン
- ハンナ・ホフマン
- シーニ・ラブ
- イルミーナ・チチコヴァ
- レイナー・ステッフェン
- ジョルジ・ナルジエフ
- ダーク・ラング
第68回ベルリン映画祭
24作品がベルリン国際映画祭のコンペティションに参加し、19作品が金熊賞の候補に挙げられました。
候補の中には、ガス・ヴァン・サント監督作&ホアキン・フェニックス主演「Don’t Worry, He Won’t Get Far on Foot」や、デヴィッド・ゼルナー&ネイサン・ゼルナー監督のウエスタンコメディ映画「Damsel」もありました。
銀熊賞
審査員長のドイツの映画監督トム・ティクヴァ(「ラン・ローラ・ラン」など)以下6名で構成される審査員は、ウェス・アンダーソン監督の最新アニメーション映画「犬ヶ島」に対して金熊賞に値しないという判断を下したようです。
「犬ヶ島」は日本を舞台にし、日本人キャストを起用することで国内でも注目されている作品。
結局、「犬ヶ島」は銀熊賞の監督賞に落ち着きました。「グランド・ブダペスト・ホテル」で審査員グランプリを獲得していたアンダーソンだけあって、それよりもランクの下がる監督賞は不本意だったでしょう。
アワードの結果を受けて、アンダーソン監督は授賞式に参加しませんでした。代わりに参加した俳優のビル・マーレイは、今まで映画界に貢献してきたアンダーソン監督を讃える発言をしています。
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また、銀熊賞の審査員グランプリはポーランド出身のマウゴジャタ・シュモフスカ監督作「マグ(Mug)」。
本作は、事故で顔を損傷した若い男性が、顔面移植手術を受ける物語。他者の外見に対する偏見について深く掘り下げられています。
アルフレッド・バウアー賞にはパラグアイ出身のマルセロ・マルティネッシ監督作「ザ・ヘアレシーズ(The Heiresses)」。
※アルフレッド・バウアー賞は新たな視点をもたらした作品に対する賞
レズビアンの物語で、同作に出演したアナ・ブルンは主演女優賞を獲得しています。マルセロ・マルティネッシはコメントで「我々は非常に保守的な社会の中に住んでおり。新たな視点を開いたことが評価されてとても嬉しく思います」と語りました。
受賞作
金熊賞:「タッチ・ミー・ノット」アディナ・ピンティリエ監督
審査員グランプリ部門:「ツワルツ(マグ)」マウゴジャタ・シュモフスカ監督
アルフレッド・バウアー賞:「ザ・ヘアレシーズ」マルセロ・マルティネッシ監督
監督賞:「犬ヶ島」ウェス・アンダーソン監督
女優賞:「ザ・ヘアレシーズ」アナ・ブルン
男優賞:「ザ・プレイヤー」アンソニー・バジョン
脚本賞:「ミュージアム」マニュエル・アルカラ&アロンソ・ルイス・パラシオス
衣装・美術賞:「ドヴラートフ」エレナ・オコプナヤ
アウディ・ショット映画賞:「ソーラー・ウォーク」
短編映画賞:「イムフラ」
金熊賞【短編映画部門】:「ザ・マン・ビハインド・ザ・ウォール」アイネス・モールダースキー
新人作品賞:「タッチ・ミー・ノット」アディナ・ピンティリエ監督