東京芸術劇場シアターイースト/ウエストで15日まで上演の柴幸男演出「わたしが悲しくないのはあなたが遠いから」感想・評判
イーストとウエストが繋がっていることを確認する面白さはあまりない
イーストとウエストで劇場がつながっており、そのどちらの劇場でも同じストーリーの作品が同時進行している。
しかも、時を同じくして。
これ演じる側としては一定のペースで進めないといけないので、かなり大変。音楽のきっかけを同じにすることで、タイミングを同じにしていると柴さんは簡単に語っていたけれども、本来音響さんがタイミングを見計らって音を出すわけだから、ある意味演劇ではなくダンスに近い感覚が求められると思う。
こういうことを知ると、一つの音楽に合わせて両劇場の俳優がまるでダンスのように音に合わせて息を吸い、声を発し、身体を動かしているのか!というワオ!感が強い。
でも、アドリブに慣れていない俳優が、二つの劇場が繋がっていることを盛んにアピールするタイムはまどろっこしくていらないと思った。西はいつまでも西であり、東はいつまでも東であって、交わることのない部外者。まさにシアターイーストとウエストで演劇をやっているというライブ感で十分。
これ、海外の一流演出家とかのレベルになってくると、たとえば両劇場のセリフをシンクロさせて、見えない違う劇場の俳優と確認なしに会話し合うクールな演出とか、スペクタクルでハラハラさせる演出であっと観客を驚かせるんだろうなと思う。
もったいない。
でも、アドリブに慣れてない感、「
感覚的に味わう作品にしては劇場が狭すぎた
「池袋ウエストゲートパーク」やるからではないけど、柴さんの作品はミュージカル向きだと思う。内容はストレート、感覚で味わうみたいな。
だから、もっとスペクタクルな演出を期待していた私としては、イーストとウエストの壁を壊すことはできないけど、同じレベルの何かをやらかすのではと期待していたところも少なからずあった。
私は、作品の美しさ【この作品を観た後に死ぬとして、それでも納得できるか】、次もこの作品を観たいか【要は、お金かけてもう一度この人が作った作品を観に行きたいか】を基準に作品を観る。
舞台作品で観た後に死んでもいいと思ったのは、ベジャールのバレエ「愛が私に語るもの」。
この基準については置いておいて、柴さんの作った作品を観に行きたいかと考えると、やっぱりミニマムに描くなら人間の根底を丁寧に描いて欲しいし、ミュージカルならスペクタクルにして欲しい。
ウエストの方が良かった
イーストは映像を中心として情報量が多すぎて、目まぐるしさしか残らなかった。ウエストの方がシンプルで良かった。シンプルな美しさが舞台とマッチしていた。雑音がなくなった。
〈評判参考〉
ブルーシールアイス食べて池袋に移動して、芸劇で「わたしが悲しくないのはあなたが遠いから」ウエストの方。この前イースト版観てだいぶ批判的な観想を持ったけど、こっちの方がよかった。両方観るととてもいい、ということではなく、ウエスト版一本だけ観ればよい、という感じ。
— Masato EGUCHI (@queequeg) 2017年10月12日
【わたしが悲しくないのはあなたが遠いから】
徳永京子さんが書いてくださいました。まっすぐ観てくださって言葉にしてくださっている。本当にありがとうございます。
わたしが悲しくないのはあなたが遠いから 想像力呼び覚ます試み:朝日新聞 https://t.co/vdNTGXs6we— 端田新菜 (@kiiiiiina) 2017年10月13日
本日の朝日新聞首都圏版夕刊に、F/T『わたしが悲しくないのはあなたが遠いから』の劇評を書かせていただきました。16時頃には駅売店や一部のコンビニで販売されます。50円です。ほぼ時差なく朝日新聞デジタルにも掲載され、こちらは簡単な登録が必要ですが無料です。ぜひお読みください。
— 徳永京子 (@k_tokunaga) 2017年10月12日