「ミュージカルブーム」と言われる今日、将来的にミュージカル俳優・女優を目指している方も多いと思います。
そこで、今回は東宝やホリプロ作品のメインキャストのバックグラウンドから、
ミュージカル俳優・女優(特にメインキャスト)になるにはどういった経歴を歩めば良いのか分析してみました。
目次
- 今年帝国劇場などの東宝系ミュージカルで主演、メインキャストを務めた俳優。
- ミュージカル系の専門学校または大学を卒業してメインキャストになる人は少ないのが実情
- 音大からはメインキャストへの抜擢が多いものの、東京芸術大などトップ校出身が多い
- 子役から一貫して業界のトップに居続けるケースはないといっても過言ではない
- 2.5次元ミュージカルからの抜擢が続くが、それでもほんの一握り
- 元宝塚トップからの抜擢も多いが、宝塚に入っても東宝メインキャストの可能性は数%
- アイドルからの抜擢も多いが、人気グループに在籍していることが大事
- 劇団四季には業界を背負ってきた俳優を多く輩出、ただし高倍率かつマーケットにも対応しないといけない時代に
- 「レ・ミゼラブル」以外、いきなりメインキャストを目指した方が良い
今年帝国劇場などの東宝系ミュージカルで主演、メインキャストを務めた俳優。
俳優
- 俳優事務所経由(主に2.5次元):小西遼生、水田航生、平方元基、植原卓也、矢崎広、浦井健治、古川雄大、伊礼彼方、内藤大希、相葉裕樹、三浦宏規、城田優、加藤和樹、東啓介、青柳塁斗
- その他劇団:石川禅(青年座)、駒田一(フォーリーズ)、橋本じゅん(劇団☆新感線)、KENTARO(劇男一世風靡)、渡辺謙(演劇集団 円)、村井國夫(俳優座)、川口竜也
- テレビ:武田真治、長谷川初範、陣内孝則、小池徹平(ジュノンボーイ)、斎藤司、三浦涼介、川久保拓司、藤井隆
- 劇団四季:市村正親、山口祐一郎、石丸幹二、福井晶一、吉原光夫、吉野圭吾、柿澤勇人
- 音大:井上芳雄、田代万里生、山崎育三郎、佐藤隆紀、宮原浩暢、上原理生
- 子役:小野田龍之介、三浦春馬、海宝直人
- ジャニーズ:屋良朝幸、林翔太
- 歌手:ROLLY、コング桑田
- 歌舞伎:松本白鸚
- 歌手・ダンスグループ:上山竜治
- その他:岡田亮輔
女優
- 宝塚歌劇団:霧矢大夢、はいだしょうこ、夢咲ねね、咲妃みゆ、鳳蘭、香寿たつき、樹里咲穂、実咲凛音、朝夏まなと、未来優希、剣幸、涼風真世、香寿たつき、彩乃かなみ、瀬奈じゅん
- アイドル:生田絵梨花、桜井玲香、衛藤美彩、ソニン、唯月ふうか、井上小百合、下村実生、櫻井玲加
- 歌手:平原綾香、神田沙也加、知念里奈、二宮愛、Crystal Kay、中尾ミエ
- 劇団四季:濱田めぐみ、木村花代、保坂知寿、久野綾希子
- オーディション:大塚千弘、屋比久知奈、前田美波里、米倉涼子
- 音大:松原凛子、小南満佑子、森公美子
- 声優:平野綾、新田恵海、朴璐美
- その他劇団:鈴木ほのか(フォーリーズ)、阿知波悟美(劇団NTL)
- タレント:宮澤エマ
- ダンス:原田薫
- 大学のミュージカル系学部:昆夏美
- 子役:熊谷彩春
※順不同
※最初に少しテレビにも出てたけど、、メインは舞台などの場合は、割合の多い方にカウントしています。
ミュージカル系の専門学校または大学を卒業してメインキャストになる人は少ないのが実情
「ミュージカル系の専門学校または大学」に卒業し、その後事務所に入り、オーディションを受けて一気にスターダムにのし上がる。
こういうキャリアを現状描けている俳優や女優は東宝系のミュージカルに関しては、ほとんどいないといっても過言ではないようです。
よく「早くからミュージカルの道に足を踏み入れていた方が良いのでは?」と考える方がいますが、今回まとめてみた結果、ミュージカルを始める時期は大学からでも、高校からでも大差はないようです。
実力の世界なので、高校から初めても、大学から始めても、何か突出したものがあるかどうかが重要なのではないでしょうか。
昆夏美は洗足大学のミュージカル学部出身。
ただし、すでに大学2年の時に東宝芸能のオーディションを受けて合格。
1か月後にはミュージカル「ロミジュリ」のオーディションに合格してジュリエットの座を射止めました。大学云々ではなく、もともと持っていた実力や資質がメインキャストに導いたと言えそうですね。
音大からはメインキャストへの抜擢が多いものの、東京芸術大などトップ校出身が多い
また、今のところミュージカル系の学部よりも音大の方がメインキャストとしてのキャリアに繋がるケースが多いです。
ただし、井上芳雄、田代万里生、上原理生は東京芸術大学という音大でもトップ校。
また佐藤隆紀、宮原浩暢に関しては声楽・ボーカル専門のグループ(LE VELVETS)で食べていけるほどの歌唱力やルックスがあったからこそ、東宝メインキャストの位置まで登りつめていると言えそうです。
子役から一貫して業界のトップに居続けるケースはないといっても過言ではない
また、子供の時から子役でミュージカルを経験し、その後順調にスターダムに上りつめている俳優が意外にも少なかったです。
海宝直人も劇団四季のヤングシンバ役としてデビューしたものの、学生時代は一度ミュージカルから離れた時期もあったようです。
そして、大きな事務所に所属するわけでもなく、地道に実力で評価され日本を背負う若手ミュージカルスターにまで上りつめました。
ファンを獲得しないとなかなかメインキャストには選ばれにくい商業系ミュージカルでは、子役として活動すること自体は無駄ではないとは思うものの、それが大きくキャリアに関わるかどうかは疑問視されるところですね。
私が以前教えていた高校にはリトルコゼットがいました。最初見たときは同世代の生徒に比べて明らかに輝いていました。それでも現在は中々芽が出ていないのが実情です。
また、「ミュージカル女優になるためにバレエなど習い事は必要か?」という疑問を持つ人も多いようです。
ただ、そもそも東宝ミュージカルでバレエなどダンススキルが必要なのはアンサンブルであることが多いです。ダンスができなくてもメインキャストになっているケースの方が多いのが実情です。
2.5次元ミュージカルからの抜擢が続くが、それでもほんの一握り
商業ベースでのミュージカルでは、ファンを連れてくることが求められます。
そのため、2.5次元ミュージカルやTVドラマなどで知名度を獲得した俳優がメインキャストに抜擢されるのは当然の成り行きでしょうか。
一覧を見ても分かるように、芸能事務所に所属し、2.5次元ミュージカルのオーディションに合格し、まずは2.5次元系のミュージカルからキャリアを築いてくことも現在のミュージカル業界では一つの選択肢でしょうか。
一方で、2.5次元ミュージカルのマーケットでは「若さ」が武器になります。そのため、将来的にミュージカル業界で生きていくことを考えると、2.5次元から離れた後でも通用するスキルを磨かざるを得ません。
一方で、2.5次元ミュージカルは単純に歌唱力やダンス力があれば評価される世界ではないのです。ルックスやファンへのサービスなど、ファンを身に付ける活動をしながらも、同時にスキルを磨き続ける。想像以上に大変なことだと思います。
また、2.5次元ミュージカルにも本当に小さな劇場で運営しているケースもあります。
「刀剣乱舞」「テニミュ」「ハイキュー」など一般人でも知っている作品にメインキャストとして起用されるのは本当に一握りです。
元宝塚トップからの抜擢も多いが、宝塚に入っても東宝メインキャストの可能性は数%
女性に関して言えば、東宝系のメインキャストのポジションは宝塚出身の女優が他を圧倒しています。
これは東宝との企業的な関係性もありますが、同じくスターシステムかつ宝塚そのものが大きなマーケットであり、退団後も一定のファンを連れてくることが見込めるという点が大きいと考えています。
退団後も宝塚で言えば「立ち役」のような役割を東宝で求められるケースも多く、将来的に長くメインキャストとして活躍したいのであれば、宝塚歌劇団を経由するべきだと言えるかもしれません。
宝塚音楽学校の倍率は毎年20倍を超えますが、このチャンスに賭けるのもありだと思います。
ただし、宝塚の世界は上下関係やふるまいなど、規則が厳しく、ミュージカルも宝塚特有のスタイルであり、音楽学校時代・宝塚入団後すぐ退団する生徒もいることが事実です。
「この世界で生き続けたい、だれにも負けず活躍したい」「宝塚に人生をささげる」ぐらいの覚悟がなければ、生きていくことは難しい世界です。
また、上記一覧の15人中12人がトップスター・トップ娘役を経験しています。
毎年の宝塚受験者が800人~1000人、そのうちトップになれるのが1~2人だとすると、東宝のメインキャストとして立てる権利を持つのは宝塚受験者のうち0.25%~0.1%以下となります。
才能があるだけでなく、容姿端麗であることなど、生まれ持った才能に左右される部分も多いです。相当険しい道のりです。
アイドルからの抜擢も多いが、人気グループに在籍していることが大事
また、最近では生田絵梨花をはじめアイドルグループに在籍しながら、メインキャストとして活躍している女優も増えています。
こちらもファンを連れてくることが期待されています。そのため東宝クラスのミュージカルでは、グループの中でも人気だったり目立つことが重要です。
何百とあるアイドルグループでも人気グループに所属することが必須ですし、単純に人気グループにいるからといって大舞台のメインキャストとして抜擢されるわけでもないです。
劇団四季には業界を背負ってきた俳優を多く輩出、ただし高倍率かつマーケットにも対応しないといけない時代に
劇団四季の場合は、人気よりも実力でメインキャストに抜擢されるケースが多いです。そういった意味では純粋にスキルを磨くことで主演となり、そうなれば箔も付くという一応描きやすいキャリアがあります。
また、市村正親、山口祐一郎、石丸幹二、福井晶一、吉原光夫、濱田めぐみなど日本を代表する、日本のミュージカルシーンをつくってきた俳優にも劇団四季出身者が多いです。
一方で、劇団四季のオーディション倍率は時に100倍近くなると言われています。また、ロングラン公演の劇団の為、公演期間中はほとんど休みがなく、自分のポジションを守らないと実力のある若手にどんどん追い抜かされていきます。
さらに、今では2.5次元系のファン層を取り入れるために、東宝でもアニメなどを原作にした作品を上演することも多いです。また、2.5次元やアイドル出身の俳優・女優の質も徐々に上がり始めています。
もし東宝など大きな舞台のメインキャストとして活躍したい場合は、スキルだけでなく、人気も獲得できるルックスなどが今後より求められてきそうです。
「レ・ミゼラブル」以外、いきなりメインキャストを目指した方が良い
東宝やホリプロ系のミュージカルで、アンサンブルからメインキャストに抜擢されるのは「レ・ミゼラブル」ぐらいです。
つまり、基本的には東宝やホリプロのミュージカルでは、「いきなり」でしかメインキャストに選ばれないのです。
ゆくゆくはメインキャスト出ることを目指して「アンサンブル」から始めても、そもそも出番が少ないので、とてつもない容姿がないとファンは一気につかないです。
そう考えると、もっと出番が多い舞台等で活躍するか、自分のスキルをミュージカル以外のところで発揮してファンを獲得していく方が現実的なようです。