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ウーリー・ステックに学ぶ「リスクとの向き合い方」世界一のアルピニストが教えてくれること

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「リスクとの向き合い方」世界一のアルピニスト、ウーリー・ステックが教えてくれること。

ウーリー・ステックを知っている人が日本にどれだけいるのだろうか。

まずはこのムービーを見て欲しい。

アイガー北壁の最速記録をとらえた空撮

これは私が大学生の時、偶然見つけたムービーである。アイガーの北壁をソロで、勇敢にもザイルやカラビナなど一切使うことなく登ってゆく。

すかさず大学の山岳部に所属していた弟に見せると、なによりも驚いていたのが、今にも崩れそうな雪庇の上を恐れることなく走ってゆく姿だった。

 

こんなチャレンジが1人の人間にできることに驚きを覚えた。同じ人間だと信じられなかった。

彼の名はウーリー・ステック。現在、世界で最も成功を収めているスイス出身のアルピニスト。

別名、スイス・マシーン。アイガー北壁を3時間以内でソロで登り、マッターホルンは2時間も経たずに登りきる。もちろん世界最速の記録保持者だ。

2015年に自己の持つ記録を塗り替えた際の映像

 

2013年には、ネパール・ヒマラヤの中央に連なる山脈アンナプルナの4峰を危険な南壁側から28時間以内に全て登頂した。

そして、2015年にはアルプス山脈の4,000メートルを超える合計82の山頂に62日間で登頂を果たした。

1976年生まれ、現在40歳。

 

 

ここで1つの疑問が思い浮かぶ。

 

 

なぜウーリー・ステックはとてつもないリスクを目の前に上へと登り続けられるのか。

そして、ウーリーがリスクと対峙するときに考えていることとはなにかー

 

2016年8月。アメリカで発行されている(日本版も発行されている)ビジネス誌Forbesが世界最高のアルピニストであるウーリー・ステックにニューヨークでインタビューを行なった。

そこで、この記事ではForbesに掲載されたウーリー・ステックのインタビューを紹介し、ウーリーの秘密に迫りたい。

 


 

私(ジム・クラッシュ)がウーリー・ステックにインタビューを行なったのはニューヨーク・シンフォニースペースでのアメリカ人アルパインクラブでの講演前のことです。

 

ジム・クラッシュ:なぜヨーロッパでの82ピーク登頂プロジェクトに挑んだのですか?

ウーリー・ステック:ちょうど、生まれ故郷でもあるアルプスの山で何かにチャレンジしてみたかったのです。

これは私がオリジナルで思いついた企画ではありません。今まで多くの人が挑み、いくつかの人が成功しています。

長い間、私は「これは挑むべきなのか?」と自問自答してきました。

なぜなら、このチャレンジは決してすごく難しいといえるチャレンジではなかったからです。

しかし、昨年の夏に私はチャレンジすることにしました。なぜなら、純粋に面白そうと思ったからです。

いまでは、あれは私にとって非常に大きな冒険の1つだったと言うべきでしょう。

普通、アルプス間を移動する際は車を使用するのですが、私はバイクで移動しました。スイスからフランス、イタリアと最高の道のりでした。アルプスのすべてについて以前よりも知ることができたのです。

 

ジム・クラッシュ:82の頂上を62日間で登頂する。それってそんなに簡単なことではないですよね?

ウーリー・ステック:このプロジェクトで最も難しかったところ、それはスタートする時です。

2ヶ月間かけてすべての山頂を登ります。第一に、最初の2週間の天候は予測できても残りの6週間の天候は予測できません。

当然ナーバスになりますよね?

毎日「とりあえず、やってみようじゃないか!」と自分に言い聞かせていました。

また、幸いなことに昨年の夏は晴れが多く、良い天候に恵まれました。

 

ジム・クラッシュ:あなたはクライミング中、あらゆることを自分でこなします。ザイルを使うこともありませんよね?

ウーリー・ステック:私はロープをほとんど使用しません。なぜなら、速さ、そして軽さを重視しているからです。

岩肌を直に登ってゆくのですが、暖かい気候の時は落石が多発しますよ。

マッターホルンのホーンリ・リッジを登る時はノーマルルートを使用しました。でもモンテローザの18の山頂をトラバースするのは本当に大変でしたね。もちろん疲れることもありましたが、マッターホルンを約2時間で登りきったりと、最高のチャレンジでした。

 

ジム・クラッシュ:プロジェクトチームについて考えていることは?

ウーリー・ステック:私も歳をとりました。今年で40歳になります。今までチャレンジしてきたことは、すべてチームにハードな日々を送らせるものでした。

もし、成功しなければ、残されたのは死だけです。アンナプルナでのチャレンジが成功した後、私は一度考え直し、一旦ステップバックし、スピードや難しさを重視しないチャレンジをしようと決めました。それがアルプスでのチャレンジだったのです。

もちろん、それでもクライミング技術を進歩させたチャレンジであることを示す必要があります。つまり、リスクは少なく、しかしパフォーマンスのレベルは上げる必要があるのです。

 

ジム・クラッシュ:アンナプルナのアルパインスタイルでの28時間ソロ登頂は、アルピニズムの歴史の中でも卓越したものです。

ウーリー・ステック:アンナプルナのチャレンジは特別なものでした。あのルートで登頂することは、私の人生をかけた夢だったのです。

南壁を登り始めた時、私は本当に生きて帰れないだろうと思いました。実は、そう感じたのは生まれて初めてのことです。

もし今振り返れば、きっとあのチャレンジは間違っていたと言うでしょう。しかし、その当時の私にとって、あのチャレンジはすべてが正しかったのです。

 

ジム・クラッシュ:ラインホルト・メセナーは私にこう語りました。「すべての8,000メートル級の山頂は遅かれ早かれ登山家によって登頂され、ガイドコースができるだろう。」あなたはこの意見に賛成ですか?

ウーリー・ステック:彼らはそれをエベレストで行い、今同じことをK2でトライしています。彼らは固定のコースを作ろうとしていますが、しかし未だに本当の意味での成功にはたどり着いていません。

だれもが、山を登る時には自分自身の道を選ぶことができ、また選ぶ必要があります。

私は、登山者に意見を押しつけたくないのです。

しかし、多くの登山者は誰かからの意見を必要とするでしょう。

もし、ネパールの山を登るとします。あらゆるルートが存在しますが、アルパインスタイルでの登頂はほとんど禁止に近い状態になっています。それは本当に残念なことだと思うのです。

こういったことがアルピニズムを壊してゆきます。エベレストのようなネパールの山を登る人でアルピニズムを心配する人はいません、いるのはお金のことを心配する人だけです。

メセナーの考えは正しいと思います。決まりきったルートを行くにも、登り方で違ってきますし。それに、酸素や固定ロープ、ガイドがいても、それが間違った登山であるとも言えません。

でも、私はそれに興味がありません。私が探し求めているものではないのです。そして、そう思うのは私だけではないでしょう。

 


 

最後の言葉が私たちのチャレンジ精神を喚起させる。お金を出せば高いところへ行ける。それは間違ったことでもない、でも人生に求めているものではない。

お金で買うのはリスクの軽減であり、チャレンジの軽減だ。逆に、お金を出しても立派なチャレンジになることもある。

 

それでは、ウーリーが成功を収められる秘密は何か?

 

まず、危うく見失いそうになる事実だが、ウーリーはフィフティ&フィフティの可能性を楽しむギャンブラーではない。

成功の可能性を極限まで高めてトライする現実的で誰よりも冷静なチャレンジャーだ。でなければ、すでにあの断崖絶壁の餌食になっているはずだ。

「I think the athlete have to be willing to take quite a lot of risk.」

つまり、リスクを常に進んで感じとろうとするからこそ、リスクを超える地点にあるピークを目指して努力し、いつしか到達することがてきる。これがウーリーを成功に導く秘密の1つに違いない。

そして、これはアスリートだけに限った成功の法則ではないだろう。

 

ウーリーの生き方は、お金を出せばある程度のことができてしまう時代に、リスクとチャレンジのせめぎ合いに鈍感になり、なんでも自分の実力で到達したと錯覚してしまう現代人に警笛を鳴らしているように思えるのは、果たして私だけだろうか。

 


 

【参考記事】

"Swiss Machine Ueli Steck On His 82-Peaks-in-62-Days Alps Climbing Marathon" Forbes

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