この記事では、海外の大学で最も読まれている「日本文学」を探ります。
現代では、村上春樹や、小川洋子などが、海外から注目される日本人作家としてメディアに取り上げられています。
では、海外の大学で扱われる日本文学とは実際どのようなものなのでしょうか。
Open Syllabus Explorerを使って調べてみた
この疑問に答えてくれるのが、「Open Syllabus Explorer」
アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの大学における課題図書の一覧が掲載されています。
では、このサイトで調べると、どの日本人作家の作品が最も扱われているのでしょうか。今回は扱われている件数をランキング化して、この記事ではお伝えします。
それでは、早速上位から発表してゆきましょう!!
1位 源氏物語 (238)
- 作者:紫式部 (平安時代中期)
- 刊行:1008年頃
- 原題:The Tale of Genji
- 海外での評価:4.29/5
- 日本人の評価:
あらすじ
王朝人の理想像光源氏の、継母藤壷に始まる愛の遍歴をつづった「女の、女による、女のための物語」である。
1位は今から1000年前に生まれた日本最古の長編小説「源氏物語」。平安貴族である色男光源氏が数々の女性(しかも継母とか、幼い少女だったり...)と恋を繰り広げてゆく。
原文で読むと長く、しかし受験だったり一般常識として知識が求められる機会も数多くある。
そこでおすすめなのが、漫画でおおまかなあらすじを理解すること。
そして、漫画でも大学院の時に、日本文学専攻の人におすすめしてもらったのが「まろ、ん?ー大掴源氏物語」
これ、「あさきゆめみし」とかと絵のタッチが違いすぎて、他の源氏漫画とは一線を画すものではございますが、短く、わかりやすく、そして何より面白い。という源氏物語ビギナーにおすすめする最高の一冊です。
2位 こころ (127)
- 作者:夏目漱石 (1867-1916)
- 刊行:1914年
- 原題:Kokoro
- 海外での評価:4.27/5
- 日本人の評価:4.35/5
あらすじ
この小説の主人公である「先生」は、かつて親友を裏切って死に追いやった過去を背負い、罪の意識にさいなまれつつ、まるで生命をひきずるようにして生きている。と、そこへ明治天皇が亡くなり、後をおって乃木大将が殉死するという事件がおこった。「先生」もまた死を決意する。だが、なぜ…。
2位は夏目漱石です。意外にも2位です。三島由紀夫とか、村上春樹が入ってくると思いました。
「こころ」は大学受験で、夏目漱石後期三部作として覚えましたね。「彼岸過迄」、次に「行人」、最後に「こころ」。
現代文に必ず出てくる作品で、日本人なら名前だけでも聞いた事はあるでしょう。
ちなみに、夏目漱石作品の2位は「坊ちゃん」でした。「夢」とかストレイ・シープでお馴染み「三四郎」も海外の学生に是非読んでいただきたい作品です。
そして、現代欧米の大学で日本人の作家として漱石の作品が数多く読まれていることを、誰よりも夏目漱石自身がお喜びなのではないでしょうか。
もともとは英語教師。イギリスでの留学中に精神病になり、日本に帰国したという過去があります。その後は英語教師として教壇に立つことはなく、漢文学の方に力を入れたということです。
3位 海辺のカフカ (122)
- 作者:村上春樹 (1949- )
- 刊行:2002年
- 原題:Kafka on the Shore
- 海外での評価:4.20/5
- 日本人の評価:3.82/5(上巻)、3.79/5(下巻)
あらすじ
「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」――15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真……。
3位は村上春樹の「海辺のカフカ」。日本では蜷川幸雄演出で舞台化されました。
4位 陰翳礼讃 (103)
- 作者:谷崎潤一郎 (1886-1965)
- 刊行:1933-1934年
- 原題:In Praise of Shadows
- 海外での評価:4.37/5
- 日本人の評価:4.56/5
解説
西洋との本質的な相違に眼を配り、かげや隈の内に日本的な美の本質を見る。
5位 ねじまき鳥クロニクル (82)
- 作者:村上春樹 (1949- )
- 刊行:1994-1995年
- 原題:The Wind-Up Bird Chronicle
- 海外での評価:4.17/5
- 日本人の評価:4.39/5(第1部)、4.61/5(第2部)、4.28/5(第3部)
あらすじ
ねじまき鳥が世界のねじを巻くことをやめたとき、平和な郊外住宅地は、底知れぬ闇の奥へと静かに傾斜を始める…。駅前のクリーニング店から意識の井戸の底まで、ねじのありかを求めて探索の年代記は開始される。
6位 憂国 (81)
- 作者:三島由紀夫 (1925-1970)
- 刊行:1961年
- 原題:Patriotism
- 海外での評価:3.99/5
- 日本人の評価:
6位に三島由紀夫の「憂国」。三島由紀夫は知っていても、三島由紀夫の作品は読んだことがあっても、「憂国」は読んだことない人が多いのではないでしょうか。「花ざかりの森」という16歳の頃に書いた作品と一緒に新潮社から出版されています。
あらすじ、
自宅にこもり、切腹を考え、そして実行するまでの一連の場面が回想とともに重苦しく描かれます。
自分自身が本当に切腹した三島由紀夫。海外の人は、この作品を通して、「三島」&「切腹」=【日本的なもの】という図式を見出し、本当のとこの「日本人的な考え」とは何なのか。を探しているのかなと思います。だって、恥で切腹する文化が定着するのは明らかに日本固有のものですから。そこに日本人特有の感覚を見つけ出そうとするのは当然のことだと思います。
また、三島由紀夫主演の映画「憂国」もあります。
7位 黒い雨 (79)
- 作者:井伏鱒二 (1898-1993)
- 刊行:1965年
- 原題:Black Rain
- 海外での評価:4.58/5
- 日本人の評価:4.46/5
あらすじ
一瞬の閃光に街は焼けくずれ、放射能の雨のなかを人々はさまよい歩く。原爆の広島――罪なき市民が負わねばならなかった未曾有の惨事を直視し、“黒い雨"にうたれただけで原爆病に蝕まれてゆく姪との忍苦と不安の日常を、無言のいたわりで包みながら、悲劇の実相を人間性の問題として鮮やかに描く。被爆という世紀の体験を、日常の暮らしの中に文学として定着させた記念碑的名作。
8位 羅生門 (76)
- 作者:芥川龍之介 (1892-1927)
- 刊行:1915年
- 原題:Rashomon
- 海外での評価:
- 日本人の評価:4.11/5
あらすじ
京の都が、天災や飢饉でさびれすさんでいた頃の話。荒れはてた羅生門に運びこまれた死人の髪の毛を、一本一本とひきぬいている老婆を目撃した男が、生きのびる道を見つける『羅生門』。
海外の映画監督からもリスペクトされ続けている日本の巨匠黒澤明監督が「羅生門」という映画を撮りましたが、あの作品のベースは芥川龍之介の「藪の中」という作品を映画化したものです。廃れた平安京の羅生門の下に下人がやってくるという始まり方は「羅生門」そのままですが。
ちなみに映画の「羅生門」は多くの人の証言によって一つの殺人という事件を描く方法として有名です。
海外のアカデミーの中で取り上げられる理由も、おそらくヴェネチア国際映画祭で金獅子賞、アカデミー賞では名誉賞を獲得した経緯もあって、海外の人々にも強く「Rashomon」という響きが残っているからでしょう。
9位 福翁自傳 (75)
- 作者:福澤諭吉 (1835-1901)
- 刊行:1899年
- 原題:The Autobiography of Yukichi Fukuzawa
- 海外での評価:
- 日本人の評価:4.68/5
解説
明治30年、福沢は速記者を前にして60年の生涯を口述し、のちその速記文に全面加筆をほどこして『自伝』を書きあげた。近代日本の激動期を背景に、常に野にあって独立不羈をつらぬいた精神の歩みが大らかに自在に語られている。語るに値する生涯、自らそれを生きた秀れた語り手という希有な条件がここに無類の自伝文学を生んだ。
10位 雪国 (67)
- 作者:川端康成 (1899-1972)
- 刊行:1937年
- 原題:Snow Country
- 海外での評価:4.17/5
- 日本人の評価:4.31/5
あらすじ
親譲りの財産で、きままな生活を送る島村は、雪深い温泉町で芸者駒子と出会う。許婚者の療養費を作るため芸者になったという、駒子の一途な生き方に惹かれながらも、島村はゆきずりの愛以上のつながりを持とうとしない――。冷たいほどにすんだ島村の心の鏡に映される駒子の烈しい情熱を、哀しくも美しく描く。ノーベル賞作家の美質が、完全な開花を見せた不朽の名作。
日本で初めてノーベル文学賞を受賞した川端康成の「雪国」がランクインしました。
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」の冒頭は耳にしたことがあるはず。雪深い温泉町とは湯沢温泉のこと。この作品は川端の旅での出会いや、事件が元になっており、芸者の駒子のモデルもいる。
三島由紀夫が日本人の感性や感覚を伝えるものである一方で、この「雪国」ほど日本の情景や風情を伝えるのにふさわしい作品はないだろう。
11位 ノルウェイの森
- 作者:村上春樹 (1949- )
- 刊行:1987年
- 原題:Norwegian Wood
- 海外での評価:4.31/5
- 日本人の評価:3.81/5(上)、3.94/5(下)
あらすじ
限りない喪失と再生を描く究極の恋愛小説!
暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。僕は1969年、もうすぐ20歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。
12位 細雪 (48)
- 作者:谷崎潤一郎 (1886-1965)
- 刊行:1941-1948年
- 原題:The Makioka Sisters
- 海外での評価:4.29/5
- 日本人の評価:4.61/5
あらすじ
大阪船場に古いのれんを誇る蒔岡家の四人姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子が織りなす人間模様のなかに、昭和十年代の関西の上流社会の生活のありさまを四季折々に描き込んだ絢爛たる小説絵巻。三女の雪子は姉妹のうちで一番の美人なのだが、縁談がまとまらず、三十をすぎていまだに独身でいる。幸子夫婦は心配して奔走するが、無口な雪子はどの男にも賛成せず、月日がたってゆく。
13位 痴人の愛 (47)
- 作者:谷崎潤一郎 (1886-1965)
- 刊行:1924-1925年
- 原題:Naomi
- 海外での評価:4.32/5
- 日本人の評価:4.23/5
あらすじ
きまじめなサラリーマンの河合譲治は、カフェで見初めて育てあげた美少女ナオミを妻にした。河合が独占していたナオミの周辺に、いつしか不良学生たちが群がる。成熟するにつれて妖艶さを増すナオミの肉体に河合は悩まされ、ついに河合は愛欲地獄の底へと落ちていく。性の倫理も恥じらいもない大胆な小悪魔が、生きるために身につけた超ショッキングなエロチシズムの世界。
14位 砂の女 (44)
- 作者:安部公房 (1924-1993)
- 刊行:1962年
- 原題:The Woman in the Dunes
- 海外での評価:4.31/5
- 日本人の評価:4.42/5
あらすじ
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。
海外でも評価の高い安部公房の作品がランクインしました。
「砂の女」は1964年に勅使河原宏監督によって映画化されています。また、その年のアカデミー賞外国語映画賞にもノミネートしました。岸田今日子さんの演技が光るおすすめの作品です。
15位 アンダーグラウンド (44)
- 作者:村上春樹 (1949- )
- 刊行:1997年
- 原題:Underground
- 海外での評価:4.22/5
- 日本人の評価:4.69/5
解説
1995年3月20日の朝、東京の地下でほんとうに何が起こったのか。同年1月の阪神大震災につづいて日本中を震撼させたオウム真理教団による地下鉄サリン事件。この事件を境に日本人はどこへ行こうとしているのか、62人の関係者にインタビューを重ね、村上春樹が真相に迫るノンフィクション書き下ろし。
16位 蓼喰ふ虫 (38)
- 作者:谷崎潤一郎 (1886-1965)
- 刊行:1928-1929年
- 原題:Some Prefer Nettles
- 海外での評価:4.00/5
- 日本人の評価:4.26/5
あらすじ
全てにおいて完璧だと思って結婚した女なのに、なぜ妻という立場になると、欲情しなくなるのだろう……。セックスレスが原因で不和に陥った一組の夫婦。夫は勝手気儘に娼婦をあさり、片や妻は夫公認の間男の元へと足繁く通う日々を送る。関係はもはや破綻しているのに、子供のことを考えると離婚に踏み切れない。夫婦を夫婦たらしめるものは一体何か。著者の私生活を反映した問題作。
17位 近松門左衛門 4大作品 (37)
- 作者:近松門左衛門 (1653-1725)
- 訳者:ドナルド・キーン
- 刊行:1961年
- 原題:Four Major Plays
- 海外での評価:
- 日本人の評価:
解説
「曽根崎心中」「国性爺合戦」「寿の門松」「心中天網島」を日本文学研究の第一人者ドナルド・キーンが翻訳。
18位 アフターダーク (35)
- 作者:村上春樹 (1949- )
- 刊行:2004年
- 原題:After Dark
- 海外での評価:3.80/5
- 日本人の評価:3.44/5
あらすじ
真夜中から空が白むまでのあいだ、どこかでひっそりと深淵が口を開ける。
「風の歌を聴け」から25年、さらに新しい小説世界に向かう村上春樹書下ろし長編小説
マリはカウンターに置いてあった店の紙マッチを手に取り、ジャンパーのポケットに入れる。そしてスツールから降りる。溝をトレースするレコード針。気怠く、官能的なエリントンの音楽。真夜中の音楽だ。
19位 千羽鶴 (34)
- 作者:川端康成 (1899-1972)
- 刊行:1952年
- 原題:Thousand Cranes
- 海外での評価:4.48/5
- 日本人の評価:4/5
あらすじ
鎌倉円覚寺の茶会で、今は亡き情人の面影をとどめるその息子である菊治と出会った太田夫人は、お互いに誘惑したとも抵抗したとも覚えはなしに夜を共にする……。志野茶碗がよびおこす感触と幻想を地模様に、一種の背徳の世界を扱いつつ、人間の愛欲の世界と名器の世界、そして死の世界とが微妙に重なりあう美の絶対境を現出した名作である。
20位 金閣寺 (32)
- 作者:三島由紀夫 (1925-1970)
- 刊行:1956年
- 原題:The Temple of the Golden Pavilion
- 海外での評価:4.20/5
- 日本人の評価:4.15/5
あらすじ
1950年7月1日「国宝・金閣寺焼失。放火犯人は寺の青年僧」という衝撃のニュースが世人の耳目を驚かせた。この事件のかげに潜められた若い学僧の悩み――ハンディを背負った宿命の子の、生への消しがたい呪いと、それゆえに金閣の美の魔力に魂を奪われ、ついには幻想と心中するにいたった悲劇……。当時31歳の鬼才三島が全青春の決算として告白体の名文につづった不朽の金字塔。
21位 個人的な体験 (32)
- 作者:大江健三郎 (1935- )
- 刊行:1964年
- 原題:The Woman in the Dunes
- 海外での評価:4.17/5
- 日本人の評価:4.57/5
あらすじ
奇形に生れたわが子の死を願う青年の魂の遍歴と、絶望と背徳の日々。狂気の淵に瀕した現代人に再生の希望はあるのか? 力作長編。
19位はノーベル文学賞も受賞した大江健三郎の作品。
22位 潮騒 (27)
- 作者:三島由紀夫 (1925-1970)
- 刊行:1954年
- 原題:The Sound of Waves
- 海外での評価:4.16/5
- 日本人の評価:4.33/5
あらすじ
文明から孤絶した、海青い南の小島――潮騒と磯の香りと明るい太陽の下に、海神の恩寵あつい若くたくましい漁夫と、美しい乙女が奏でる清純で官能的な恋の牧歌。『ダフニスとクロエ』に影響されたこの作品、人間生活と自然の神秘的な美との完全な一致をたもちえていた古代ギリシア的人間像に対する憧れが、三島を新たな冒険へと駆りたて、裸の肉体と肉体がぶつかり合う端整な美しさに輝く名作が生れた。
三島由紀夫がエーゲ海を舞台にした古代ギリシャ神話『ダフニスとクロエ』を参考にして書いた作品。エーゲ海は三重県鳥羽市の歌島へと舞台を移し海女と漁夫の恋愛が繰り広げられる。
23位 武士道 (24)
- 作者:新渡戸稲造 (1862-1933)
- 刊行:1900年
- 原題:Bushido: The Soul of Japan
- 海外での評価:4.37/5
- 日本人の評価:4.16/5
解説
「武士道はその表徴たる桜花と同じく、日本の土地に固有の花である」―こう説きおこした新渡戸稲造(1862‐1933)は以下、武士道の淵源・特質、民衆への感化を追求、考察し、武士道がいかにして日本の精神的土壌に開花結実したかを説き明かす。「太平洋の懸橋」たらんと志した人にふさわしく、その論議は常に日本のみならず世界的コンテクストの中で展開される。
24位 雁 (21)
- 作者:森鴎外 (1862-1933)
- 刊行:1911-1913年
- 原題:The Wild Geese
- 海外での評価:4.00/5
- 日本人の評価:4.16/5
あらすじ
貧窮のうちに無邪気に育ったお玉は、結婚に失敗して自殺をはかるが果さず、高利貸しの末造に望まれてその妾(めかけ)になる。女中と二人暮しのお玉は大学生の岡田を知る。しだいに思慕の情をつのらせるが、偶然の重なりから二人は結ばれずに終る……。きわめて市井的な一女性の自我の目ざめとその挫折を岡田の友人である「僕」の回想形式をとり、一種のくすんだ哀愁味の中に描く名作である。
25位 美しさと哀しみと(20)
- 作者:川端康成 (1899-1972)
- 刊行:1965年
- 原題:Beauty and Sadness
- 海外での評価:4.32/5
- 日本人の評価:4.20/5
解説
京都を舞台に、日本画家上野音子、その若い弟子けい子、作家大木年雄の綾なす愛の色模様。ノーベル文学賞川田康成が書いた、哀しさの極みに開く官能美の長篇名作。
25位 斜陽 (17)
- 作者:太宰治 (1909-1948)
- 刊行:1947年
- 原題:The Setting Sun
- 海外での評価:4.43/5
- 日本人の評価:4.24/5
解説
「無頼派」「新戯作派」の破滅型作家を代表する昭和初期の小説家、太宰治の長編小説。初出は「新潮」(1947年)。母、かず子、直治、上原の四人を中心として、直治の「夕顔日記」、かず子の手紙、直治の遺書が巧みに組み込まれるという構成の作品、没落していく弱きものの美しさが見事な筆致で描かれている。発表当時から現在にいたるまで賛辞の声がやまない、「人間失格」と並ぶ太宰文学の最高峰。