煌びやかな宝塚の世界。舞台にドレスに、キラキラとした装飾が溢れる空間。
その世界を作り上げているもののひとつに、娘役さんのアクセサリーがあります。素敵な髪飾りや、ネックレス。そのうちのほとんどが娘役さんによる手作りのもの。
今回は、宝塚ファンとしてアクセサリーづくりに関わられた経験をお持ちの方に、宝塚歌劇団のアクセアリーについて作り方から「これはすごい」と思ったアクセサリーまで解説していただきました。ぜひ最後までお読みください。
以前ご縁があってアクセサリー作りをお手伝いしたことがあります。
アクセサリー作りの秘話や娘役さんの苦労を知れば、ひと味違う楽しみ方ができるかも…?知られざる娘役アクセサリーの世界をご紹介します。
宝塚歌劇の髪飾りの作り方とポイント
まず、アクセサリーのうち、一番個性が求められるのが髪飾り。
とくにショーの際、娘役さんはひっつめのお団子をベースにカツラやウィッグを次々と付け替えていくので何種類もの髪飾りを自前で用意します。その形状は様々で、カツラにつけておくものもあれば、自分のお団子にそのまま装着するものもあります。
中でも、娘役さんが一番力を入れて作るのは『お団子キャップ』。
これはデュエットダンスや娘役群舞の際に、お団子につけて使うもので、1公演に2~3つほど作ることもあります。衣装や公演のテーマに合わせてデザインを考え、針金を使って作ります。
簡単に作り方をご紹介すると…
お団子キャップ作成の手順
- デザインの図案(色、使う素材まで書いておくと良し)をもとに材料をそろえる
- 飾り針金(ワイヤーにサテンとストーンがついたもの)でベースを作る
- ワイヤーで飾り針金を結び、形を固定する
- ストーンやビーズで装飾する
書いてみるととても簡単に聞こえるのですが…
これがとても難しいんです。ワイヤーはささると痛いし曲げるのには力がいるし。
娘役さんは忙しいお稽古期間中、ずっと色々な資料を参考にしながら工夫を凝らして、作ってはやり直して…何度も納得のいくまで作り変えられます。
私もお手伝いさせて頂いていた頃、
「ここのストーンをシルバーからオーロラに変えたい」や「ここの飾りワイヤーをラインストーン1つ分長くして、ワイヤーの付け位置を一つずらしたい」などそれはもう1mm単位での修正を伺いました。まさに娘役魂…!
おすすめの髪飾り
では、これまでの公演で私が素敵だなあと思った髪飾りをご紹介しますね。
*月組『Dance Romanesuque』フィナーレ(妃鳳こころさん)
これは私が見たお団子キャップのうち一番入り組んでいる形状。赤とシルバーの飾り針金がこれでもか!というほど曲がりくねっているところにシルバーのストーンラインが重ね合わされた複雑なお団子キャップ。
お衣装は赤にゴールドなのですが、正面のティアラからお団子キャップまでがシルバーに統一されていることで上品にまとまった印象になっている気がします。
*雪組『Shining Rhythm!』雪組(花帆杏奈さん)
水色の鮮やかな衣装に合わせて使われた水色のオーガンジーがとても素敵で印象的でした。
前から見た時にふわふわの水色のオーガンジーに輝きの強いストーンが散りばめられていて前から見ても華やかで素敵だなあと感じた記憶があります。
*花組『exciter!!』全国ツアー ドリームガールズ(菜那くららさん)
白と黒をベースにしたシックなお団子キャップなのですが、黒のスワロフスキーで「EXCITER」の文字が入っている、かなりハイレベルなお団子キャップ…!
お友達に教えて貰ってから公演を見て、その文字を見つけた時の嬉しさたるや(笑)。細部のアクセサリーへのこだわりを見つけると、まるで隠れミッキーを見つけたような、ほっこりした嬉しい気持ちになります。
*宙組『クライマックス』デュエットダンス(野々すみ花さん)
野々さんも、相手役の大空さんも、深い青のサテンに流線状のラインストーンが飾られたとてもきれいなお衣装。お衣装と同じ青をベースにリボンのように作られたお団子キャップは、とても珍しい形でお衣装にすごく映えていて、前から見ても横から見てもおしゃれで素敵だなと感じたのを覚えています。
*花組『ME AND MY GIRL』デュエットダンス(花乃まりあさん)
ゴールドとピンクをベースにしたハート形のお団子キャップ。大人っぽいシンプルなお衣装にも合うデザインで、他組の娘役さんが「ミーマイの花乃ちゃんのお団子キャップがかわいい」と仰っているのを聞いてから注目したのですが、実際に舞台で拝見するととても素敵で印象に残っています。
花乃ちゃんも雑誌でサリーのビルへの愛を現したとおっしゃっていました。アクセサリーに込められた思いを知るとさらに舞台が楽しくなりますよね。
それにしても花組の娘役さんは特にアクセサリーレベルが高い気がします…。
*月組『BADDY-悪党は月からやって来る-』デュエットダンス(愛希れいかさん)
重ための光沢のある深紅のサテンのドレスに、赤いグローブというお衣装に合わせて作られた同じ深紅の飾り針金を基調としたお団子キャップ。
赤に加えて、相手役の珠城さんのお衣装と同様に、黒の飾り針金にオーロラのスワロを重ねて、ダリアの花びらのように形どり、大人っぽく作られたお団子キャップです。
珠城さんと組んで踊っているとお2人の衣装にとても馴染んでとても素敵なデザインだなあと感じました。
宝塚歌劇のネックレス・イヤリングの作り方とポイント
娘役さんはネックレス、イヤリングも手作り。実際に舞台上で照明を受けてお衣装とお化粧に合わせてみないと合うものが分からないので、娘役さんは舞台稽古の際に前回の公演で使ったものなど、手持ちのアクセサリーをたくさん持参します。
その中で一番イメージに近いものをアレンジしたり、解体して作り直したりするので、舞台稽古の夜~初日まで娘役さんはいつもほぼ徹夜です。
ネックレスはたくさんのストーンやビーズを金具とワイヤーで繋いで作ります。
これがまた難しい…ストーンを組み合わせて左右対称にすることも、金具を止めるときにペンチでワイヤーを曲げることも、こんなに難しいとはお手伝いするまで知りませんでした…。娘役さんは本当にすごいです…。
では、ネックレス・イヤリングも印象的なものをご紹介しますね。
おすすめのネックレス・イヤリング
*星組『postlude』(遠野あすか)
お衣装はストラップの部分にフラワーモチーフが連なったデザインになった可愛いドレス。お花で統一感を出すように、チョーカーはストラップと同じお花、髪飾りも造花にしてあるのですが、一番かわいいのがイヤリング。垂れ下がるデザインの先にピンクのお花のビジューがあしらわれていてとってもメルヘンで可愛いです。
*星組『Etoile de TAKARAZUKA』デュエットダンス(夢咲ねね)
シルバーの生地にシルバーのストーンが散りばめられた煌びやかなドレスに合うよう、アクセサリーも髪飾り(ワイヤーが垂れ下がるデザインが斬新でとても素敵!)もシルバーで統一されているのですが、ネックレスのデザインがとてもお洒落。
ドレスがカシュクール風になっているので胸元が尖っているのですが、ネックレスがそのデザインに沿うように、ビジューが三角形状にあしらわれています。エッジが効いていて素敵なデザインです。
*宙組『神々の土地』(伶美うらら)
軍服とドレスでの舞踏のシーン。白地に金の刺繍が施された煌びやかなドレスに合うようにパールとゴールドを基調に作られたネックレス。ビジューが垂れ下がるデザインが華やかで、とても綺麗。これ対称に作るの難しかっただろうなあ…。
伶美さんは退団後もアクセサリーを販売していらっしゃいますし、娘役さんのなかでもアクセサリー作りが得意な娘役さんでした。
*雪組『仮面のロマネスク』プロローグ(花總まり)
娘役のレジェンド、花總さんのアクセサリーの中ではメルトゥイユ夫人のものが一番好きです。スチールにも使われた濃紺のドレスに合わせたネックレスなんですが、シルバーと青のスワロフスキーが交互にタイル状に織り込まれていてとても綺麗。イヤリングも耳元に青のアクセントを置いて、シルバーがダイヤ状に垂れ下がるように作られています。
ドレスとの統一感も素晴らしくて、DVDでもその華やかさがしっかりと見てとれます。
いかがでしたか?
娘役さんのアクセサリーを気にすると、またさらに宝塚の深い魅力に気づきますよね。
これからの観劇の際にもぜひ確認してみてくださいね。