クリストファー・ロビン主人公の映画「プーと大人になった僕」 ネタバレ・あらすじ | 作品の魅力を解説
ノスタルジーあふれるクリストファー・ロビン主人公の映画「プーと大人になった僕」の予告編がようやく公開されました。
心温まるプーさんの物語を、キャラクターやキャストの紹介と一緒に解説してゆきます。
A・A・ミルンの児童小説でくまのプーさんが登場したのは1926年頃。
それから、ディズニーのアニメ作品として有名になり、現在では最も知られるキャラクターの一つとなりました。
今の私と同じ世代でくまのプーさんと一緒に子供時代を過ごしていない人はいないのではないでしょうか。
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クリストファーが40歳になって家族を持ったときのお話
しかし、子供のころにプーさんに出会った私達も、いつかはプーさんと離れ、社会に出てゆきます。
最新実写映画「プーと大人になった僕」でも同じように、クリストファー・ロビンがプーさんから離れてロンドンで働き、家族を持つ。そんなところからストーリーが始まってゆきます。
そして、クリストファー・ロビンも我々同様、大人の暮らしに直面し悩むのです。
私たちも、悩んだ時にふと子供の頃に好きだった小説や映画、物語に出会うと何か大切なことを思い返しますよね?
クリストファー・ロビンの場合、彼が悩んでいたときに現れたのが子供の頃に一緒に遊んだプーさんでした。
映画の中で、プーさんはクリストファー・ロビンにとても重要な知恵とひらめきを与えます。
「ネバーランド」と対をなす姉妹編
本作品の監督であるマーク・フォスターは、映画「プーと大人になった僕」が彼の手掛けた「ネバーランド」と対をなす姉妹編であると語りました。
「ネバーランド」はピーター・パンの物語が生まれたきっかけを、作家ジェームズ・バリーと少年との出会いから描いた映画です。ミュージカルにもなっており、日本でも有名な作品です。
では、実写映画「プーと大人になった僕」はどんな話なのか。
あらすじを映画の解説とともにご紹介してゆきます。
あらすじ
第二次世界大戦後のロンドン
古いルートマスターバス、古風な地下鉄のサイン、道行く男性はハットを深々とかぶる。舞台は昔のロンドン、街は第二次世界大戦からようやく立ち直る兆しを見せはじめた頃。
「時代設定は戦後の1949年」
こう語るのは監督のフォスター。
「メインの撮影はロンドンでおこなった。またサセックスがA・A・ミルンの原作の雰囲気には一番近かった。私の作品でロンドンを舞台にした4つ目の作品だ。この街に来ると、時間をタイムスリップすることができる場所があることに気付くよ。まるでタイムカプセルのようだね」。
後で説明しますが、「プーと大人になった僕」の時代設定は、ディズニーで描かれる物語の30年後。つまり、クリストファー・ロビンは40歳くらいの設定です。
戦争と言う「くまのプーさん」には一切関係のなさそうな出来事が、「プーと大人になった僕」では物語の根底に深くかかわってきます。
クリストファー・ロビン役はユアン・マクレガー
クリストファー・ロビンを演じているのはユアン・マクレガー。
フォスター監督とは2005年に出演したサイコスリラー映画「ステイ」以来となります。
「私が最初に脚本を読んだ時、マクレガーのことが思い浮かんだんだ」
とフォスター監督は語りました。
「誰がクリストファー・ロビンを演じるかは私にとって重要な問題だった。彼の中に、あの子供時代のクリストファー・ロビンが見えるんだ。もちろんユアンは立派に成長した大人だが、同時に彼の中には子どもらしい遊び心があって、彼の中には小さな少年がいるんだよ」。
ユアン・マクレガーは映画俳優としてスクリーンでしか見たことのない私ですが、フォスター監督の発言はとてもよく分かる気がします。
ビジネスマンとして苦心するロビン
クリストファー・ロビンが映画の中で苦心しているのは、彼が務めているウィンズロー・エンタープライズの経営難を救うこと。
会社のビルは大きく、いかにも大企業といったとこですが、戦後の経済危機の中にあって、事業は上手くいっていません。
「戦場へ行っていたクリストファーは、戦後にロンドンへ戻る。そしてウィンズロー社製の旅行かばんを売る仕事に就く。戦後、まだ経済復興は果たせず、みな貧乏で旅行なんて行けなかった」こうフォスター監督は説明する。
「旅行用のかばんはとてもよく売れると言える状況ではなかったんだ」。
クリストファーの上司キース・ウィンズローは威圧的。
キース・ウィンズローを演じるのはマーク・ゲイティス。どこかで見たことある人もいるでしょう。日本でも大人気のドラマ「Sherlock」でシャーロックの兄マイクロフトを演じています。
2016年にはローレンス・オリヴィエ賞を授賞しながら、プロデューサーとしても活動するなどマルチな才能を発揮する俳優。
「シリアスな場面とコメディの間を上手く演じられる人が欠かせなかったんだ。マークはそれを上手にこなせるんだよ」
フォスター監督は語る。
「マークが演じるのは会社のオーナーの息子。彼が任されているのは旅行かばん部門。それが彼の父の会社でも売り上げが芳しくない部門であることを、キース・ウィンズローはよくわかっていないんだ」
売上が良くない旅行かばん部門を任されたキース・ウィンズロー。しかし、オーナーの息子だから上手くゆかないはずがないと思っている。
売り上げが芳しくない理由を知らずにボスを務めるところに、シリアスとコメディが生まれます。
そして、その間を埋めてゆくのがクリストファーであり苦悩なのです。
クリストファー・ロビンと家族
クリストファーは苦悩を抱えながらも、愛する家族を養うために頑張らないといけない。皮肉なことに、そのためには家族と会えない時間を多く過ごさないといけない。
※ちなみに、妻のイヴリン役はマーベルの映画やドラマでペギー・カーターを演じるヘイリー・アトウェル。ロンドン生まれの35歳。
物語では、ウィンズロー社で週末に緊急の会議が入ります。そのために、クリストファーは前から予定していた家族旅行を中止しざるを得なくなるのです。
「クリストファーが家族に会えるのはほんと少ない時間になってゆく。妻イヴリンにはもうそれも日常茶飯事になってしまっている。どんなリレーションシップも、家族を隔てる悪循環になってしまうんだ」
フォスター監督は詳細に説明します。
会社での苦悩が、家族を巻き込むようになる。そんなとき、子供の頃に出会ったあの黄色いクマのぬいぐるみがクリストファーの前に現れるのです。
旧友プーの登場
クリストファーと家族の距離が離れてゆく。
戦争から戻り、大人が巻き起こす惨事に直面した後に、次は日常的な社会でも別の種類の苦悩が待っている。
大人というものに心底幻滅したクリストファー。
彼に子ども頃の純真な心を思い出させ、また大人として社会を生きる上で大切なことを教えてくれる存在が現れる、それがくまのプーさん。
プーさんの声は1988年から演じ続けているジム・カミングス。
「カミングスがプーさんを演じることは重要なことなんだ。なぜなら、視聴者は彼の声と演技にこそノスタルジーを感じてきたからだ」
監督は語ります。
特筆すべきアニメ版との違いは、プーさんにも成長が見られることです。
「ジム・カミングスには少し成熟したプーさんを演じてもらっている。クリストファーがプーに出会ったとき、プーはまだ新しいぬいぐるみだった。しかし、もう30年が経ったのだ」
ちなみに、くまのプーさんが本物の熊でなく、ぬいぐるみだということを知らない人はどのくらいいるのでしょう。
映画「プーと大人になった僕」に登場するプーさんは、私達がディズニーで見るイメージとは少し異なっています。
中には、共感より違和感を覚える人もいると思います。
事実、パディントン的な可愛さをイメージしていた私は、最初このプーを見たときに完全に度肝を抜かれました。
しかし、プーがぬいぐるみだと考えれば、少し汚れたプーが過ごした日々に感慨深いものが自然と生まれてくるのです。
「私達はオリジナルであるE.H.シェパード、そして初めてディズニー作品に登場したときのモノクロのイラストに戻りました」
フォスターはこう説明します。
「実写化する上で、クリストファーとプーの関係性をリアルにするためには、本物のテディベアとしてプーを登場させる必要がありました。我々スタッフは、20年代につくられたヴィンテージのおもちゃを出来るだけ多く見て、どのようにデザインされ、どうやってつくられたのかを学びました」
また、予告動画で登場するプーは、すべてCGI技術により作成されています。
キャストはおそらく私たちが知っているプーの人形を目の前にして演じているのでしょう。
予告編では分かりづらいが、実際に私たちが見ているプーと、役者の見ているプーが違うとき、感情的な齟齬が生まれやすいです。
これは実写映画の高いハードルであり、「プーと大人になった僕」がそれを観客に感じさせないかどうか。
そこに批評の着目点があることは間違いありません。
さて、今紹介できることはここまです。
このあとどんな展開になるのか。パディントン的に人が生きる熊のぬいぐるみを自然と受け入れるのか。
それとも、人の前ではぬいぐるみとしてふるまうのか。
今の段階では謎は尽きませんが、情報が入り次第この記事でご紹介してゆきます。
日本公開日
日本公開日が9月14日(金)に決定しました!