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EDMとは?
ここ20年の間でEMD(electronic dance music)は音楽業界の中でも最も大きなジャンルのひとつとなった。というか、あの圧倒的なサウンドの中で踊る若者たちを観ていると、もはや一番大きなジャンルなのではないかと思わざるをえない。
迫力のあるビート、とろこせましと動くライト、そして身体の中心まで揺さぶるサウンド。
会場のオーディエンスはシェイクし、腕を上下に激しく振る。
EDMはこの巨大なオーディエンスを音楽で共感と共鳴へと導く。
もはやクラブやフェスにドル箱であるEDMアーティストは欠かせなくなった。
そして、彼らは今や最も稼ぐミュージシャンの仲間入りを果たしている。
「EDM」という新しい音楽の時代
ハウス・ミュージック、ロック、ヒップホップなどが集まったものが「EDM」だと言われることがしばしばあるが、私が知る限り「EDM」とはひとつの新しい音楽のジャンルに違いないと思う。
ロックやヒップ・ホップのダンス、音楽があくまでも既存の制度や人に対するアンチテーゼで「ホット」なはたらきだったのに対し、「EDM」はいたるところまで「クール」だ。
不満を抱えている若者は現代にも数多くいて、その鬱憤を晴らすために巨大なサウンドに共鳴するというシナリオは否定しない。
しかし、あの会場で流れるサウンドも共鳴する若者も、その姿勢はなにかを主張するのではなく、その場を楽しむという「クール」なはたらきなのである。
EDMはポスト・モダンの先駆者
そして、アートの世界ではアンディ・ウォーホルがポスト・モダンを生み出したアーティストとされている。
ウォーホルが作品で目指したところもこの「クール」さだ。
もし、大衆音楽のモダンな動きのメインストリームが「ロック」だとしたら、ポスト・モダン的な動きのメイン・ストリームは「EDM」だろう。
なにごとも新しい歴史の分かれ目を体験するのは勇気がいるものだ。
でも、この記事を読む人には、ぜひ今から紹介するアーティストの音楽を聴き、会場に訪れてほしい。
聴けば自ずとわかるが、上下に体を動かす若者たちの印象とはかけはなれているくらい、「クール」で「美しい」サウンドが味わえる。
※ランキングは海外WEBサイト「Ranker」の記事『The Best EDM Artists』より7万票から選ばれたトップ10を参考にした。
10位 Swedish House Mafia
2008年から2013年まで活動していたDJユニット。ここで紹介する「Don't You Worry Child」は、はじめはさわやかさなメロディーラインが続くが途中から「Don't You Worry Child」がリピートされ身に迫るような展開になる印象的な曲だ、Youtubeでは4億回に迫る勢いで再生回数を伸ばし続けている。
9位 Hardwell
オランダ出身の28歳。14歳の時にはDJとしてクラブなどで活動しはじめ、2015年のアルバムは全米チャートで1位に輝いた。「Run Wild」はレーシングカーが徐々に加速してゆくような高まりを曲が進むにつれて感じるHardwellのヒット曲だ。
8位 Martin Garrix
オランダ出身の20歳。17歳の時に発表した「Animals」はボーカルがいないシンプルなサウンドながらYoutubeの再生数が9億回に達成した。
7位 Calvin Harris
スコットランド出身の32歳。2012年に英アルバムチャートで1位。「Summer」は男性のさわやかなボーカルと疾走間が相まって印象的なサウンドに仕上がっている。特にサビのメロディーラインは聴いたら一生忘れないだろう。
6位 Tiësto
オランダ出身の47歳。EDMの生き字引的存在。アテネオリンピック開会式ではDJとして入場音楽をライブで演奏した。次世代のEDMのトップアーティストになるだろうMike Williamsとのコラボ作品「I Want You」は飛び跳ねるようなサウンドが特徴的。
5位 Daft Punk
フランス出身の二人組。戦隊もののような光る仮面をかぶってDJをする。ディズニー映画「トロン:レガシー」のサントラも担当。Daft Punkといえば「One More Time」だが、ここではアカペラグループPentatonixのDaft Punkカバーをおすすめしたい。
4位 deadmau5
カナダ出身の35歳。ネズミのかぶりものでDJをする姿が特徴的。イロニーのあるかわいいかぶりものとは打って変わって爽やかな宇宙的サウンドは聴いていて心地よい。
3位 Avicii
スウェーデン出身の27歳。2013年に発表した「Wake Me Up」は全英1位に輝く。美しいメロディーラインとメッセージ性の強い男性ボーカル曲「Wake Me Up」はYouTubeで10億回再生された。
2位 Skrillex
アメリカ出身の28歳。元々はポスト・ハードコアのボーカル。ジャスティン・ビーバーとのコラボ作品がある。「RKRILLEX」の展開を聴いても思うのだが、ライブでのSkrillexのオーディエンスの引き込みかたは超上手い。パフォーマンス型サウンドアーティストというべきかもしれない。
1位 Zedd
海外のEDMファンが選ぶアーティストで1位に選ばれたのはZeddだった。ロシア生まれの27歳。ロックバンドからEMDの世界へと進み、現在までにレディ・ガガ、アリアナ・グランデのリミックスを手掛けている。Zeddといえば私の中では女性シンガーFoxesがボーカルを担当したClarityだ。Avicii「Wake Me Up」のような歌詞によるメッセージ性ではなく、Foxesのメッセージ性のある歌い方とZeddのクールなサウンドが絶妙なハーモニーを生み出している。
1位はロシア生まれのZeddだった。27歳で1位に輝くのが「クール」と「共感・共鳴」で成り立つEDMの世界観を体現している。
「EDMは現代のテーマパークか?」という記事があったが、ミッキーのいないディズニーランドのようなものだ。トップに君臨し続けるような中心がいないので、オーディエンスはなにかに合わせることなく、みんな平等に「私が私であること」を許されているのだ。
自由な社会といえども目には見えないハードルがはびこる世の中で、若者たちは右往左往している。
そんな状況で、必然的に生まれたジャンルがEMDだと言えそうだ。