今や世界を代表する振付家マシュー・ボーンが、アカデミー受賞映画「赤い靴」をバレエ化し、来月よりロンドンで上演します。
マシュー・ボーン版「赤い靴」
12月6日ロンドンで初演
プレミア公演が11月にプリマスの劇場で行われ、12月6日から来年1月29日までロンドンのサドラーズウェルズ劇場で本公演を迎えます。
世界的振付家マシュー・ボーン
マシュー・ボーンは現在56歳のイギリス出身の振付家です。自身のダンスカンパニー「ニュー・アドベンチャーズ」で演出や振付を行なうだけでなく、ミュージカル「メリーポピンズ」の振付でブロードウェイにも進出しています。
マシュー・ボーンの特徴とは
「眠れる森の美女」や「シンデレラ」など、クラシックなバレエを現代に置きかえた作品が多く、振付もコンテンポラリーダンスとバレエの動きをミックスしたような独特のスタイルにアレンジしています。
また、最も有名な作品はマシュー・ボーン版「白鳥の湖」でしょう。初演はアダム・クーパー主演で、すべての白鳥を男が踊るという画期的な作品です。
映画「赤い靴」について
「赤い靴」は1948年に公開されたイギリスの映画です。アカデミー賞では5部門にノミネートし、音楽賞を受賞しました。
監督はマイケル・パウエルとエメリック・プレスバーガー。アンデルセンの童話「赤い靴」が原作です。
「赤い靴」あらすじ
若いバレリーナが新作バレエ「赤い靴」の主役に抜擢される話です。
主人公のダンサー、ヴィクトリア・ペイジはある夢を見ます。
その夢とは、魔法をかけられ美を手に入れた若い女性ダンサーの役を演じることで、世界中で最も有名なダンサーになる一方、赤い靴に狂気的にとりつかれるという内容です。
ヴィクトリアはその後ダンスに一生を捧げますが、その一方であの日見た悪夢にさいなまれ、悲劇的な結末を遂げます。まるで夢の中の少女のように。
マシュー・ボーンの「赤い靴」への想い
想い
最近母国イギリスよりナイトの称号を得たマシュー・ボーンは、「長年かかえている野望」として「赤い靴」の舞台化を挙げました。
BBCニュースのインタビューでは、
「映画『赤い靴』が私にとって初めて見たバレエです。それは怪しく、またバレエの素晴らしい世界がありました」
「バレエとはとても魅力的なものに思え、歴史というパズルのひとかけらをありありと見た気がしたのです。」
と語っています。
映画「赤い靴」の音楽について
映画「赤い靴」の音楽はハリウッド黄金期に活躍した作曲家バーナード・ハーマンが担当していました。
バーナードが関わった中で最も有名な映画はヒッチコック監督の作品です(「サイコ」や「めまい」など)。
また、彼の業績はそれだけではありません。
「市民ケーン」や「地球が静止する日」、スコセッシ監督の「タクシードライバー」などの後世に残る偉大な作品の音楽を数多く担当してきました。
バーナード・ハーマンへの傾倒
マシュー・ボーンはバーナードが作曲した「市民ケーン」「幽霊と未亡人」の曲を「赤い靴」に使用すると語りました。
「長い間、私はバーナードの音楽を愛してきた。『赤い靴』では彼の曲をうまく生かしたいと思う...、彼の曲は今まで少しないがしろにされすぎたのではないでしょうか、でも彼の曲は劇のなかで実に良い働きをするのです。」
さらにマシュー・ボーンはこう語ります。
「『赤い靴』とバーナードの音楽が結合したらとても美しいものができあがるでしょう。また、私にはバーナードの音楽の良さを若い観客へと伝える働きもしたいと思ってる。」
「バーナードの音楽は一見とても華麗に聴こえる。しかし実際は、美しさの中にある闇をうつしだしている。それが映画の筋に絶妙にマッチしているんだ。」
ロバート・デ・ニーロ主演の「タクシードライバー」も、トリュフォーの「華氏451」もバーナードの音楽があったからこそ生まれた作品です。
そして、それはあのサスペンス映画の神様ヒッチコック作品にも同じことが言えます。
今回の作品では、マシュー・ボーンの良さ、そして非常に怪しくもあり、また悲劇的でもある「赤い靴」の良さをどう引き立てるのでしょうか。
ヒッチコックファン、バーナードファン、映画「赤い靴」ファン、マシュー・ボーンファンすべての人に驚嘆と深い印象を与える作品になりそうです。
主演はオーロラ姫役のアシュリー・ショー
また、主演は前作『眠れる森の美女』でオーロラ姫を演じたアシュリー・ショーの予定です。
アシュリーは2009年から現在までマシュー・ボーン主宰のカンパニー「ニュー・アドベンチャーズ」に所属し、プリンシパルとして活躍中のダンサーです。
振付家、音楽、キャストの三拍子がそろったマシュー・ボーン版「赤い靴」。
日本での上演はいつになるかまだわかりません!
気になる人はぜひロンドンのサドラーズウェルズ劇場まで。
マシュー・ボーンの作品を見てみたい人はぜひDVDで。