「犬ヶ島」が黒澤明の映画をオマージュしたシーンを解説 | 七人の侍から蜘蛛巣城まで
5月25日に日本で公開されるウェス・アンダーソン監督のストップモーション・アニメーション映画「犬ヶ島」。
この映画は日本を舞台にしており、ウェス・アンダーソンが大好きな黒澤映画からの影響を強く受けています。
そこで、実際にどの箇所が黒澤映画のオマージュなのかを解説します。
野良犬
「野良犬」のコンセプトが顕著に「犬ヶ島」には現れています。それは、「野良犬」が盗まれた拳銃とその犯人を探し出すのに対し、「犬ヶ島」が行方不明の犬スポッツを探し出すからだけではありません。
「犬ヶ島」では、家畜化されたペット。として野良犬と住む世界が区分されています。家畜化されたペットは文明化を示し、野良犬はその対極にある野蛮性を示しています。映画には、「野良犬」と同じく種族や階級といった偏見が明確に提示されているのです。
そして、主人公であるアタリ自身が、幼い頃に列車事故で両親を亡くしてしまった野良犬のように描かれています。
主人公アタリが周りの世界から隔たれた存在であることは、ウェス・アンダーソンの描くキャラクターだけではなく、黒澤明の映画に登場するヒーローたちにも共通しています。
野良犬
帰宅中にバスの中でピストルを奪われた新米刑事が、そのピストルで殺人を続ける犯罪者を追いつめる。1949年公開の映画であり、闇市やスラム街、ホールなど、戦後の社会の混沌とした風景も見ものである。
■出演:三船敏郎、志村喬、淡路惠子
七人の侍
「犬ヶ島」の最初の方のシーンで、犬のヒーローたちがライバルと戦うシーンがあります。ここのシーンがのショットが「七人の侍」を彷彿とさせます。
集団で戦うシーンと、キャラクター個々の顔を、ワイドショットとクローズアップでリズミカルに映すのです。
七人の侍
黒澤明が初めて撮影にマルチカム方式(複数のカメラで同時撮影)を用いた映画。
貧しい百姓たちが侍を雇い、野盗化する野武士たちから村を守ろうとする。
■出演:志村喬、三船敏郎、木村功
蜘蛛巣城
「犬ヶ島」では白い色が多く使用されており、そこに現れるアタリの銀色の服、そしてゴミの島の暗い灰色が重なり、まるで白黒映画を見ている気分を味わうことができます。
そして、黒澤映画のようにアンダーソンは霧を使って陰影を出しています。
ストップモーション・アニメーションの技術により、霧の肉感性を上手に引き出しているのです。
蜘蛛巣城
シェイクスピアの3大悲劇「マクベス」が原作。
蜘蛛巣城の城主に仕える武将鷲津武時は、城の前にある森で老婆と出会い、ある予言を聞く。その予言が元で、君主を殺し、城主となるのだが...
■出演:三船敏郎、山田五十鈴、志村喬
天国と地獄
小林市長は権藤金吾と重なる個所があります。権藤金吾は口ひげをたくわえた、製靴会社の工場担当常務。映画では三船敏郎が演じています。
小林市長は町を統制し、とても不気味な反対派であるドモ少佐と戦っています。権藤金吾もまた、会社における反対派と戦います。
また、その風貌にも似ている個所がたくさんあります。
天国と地獄
アメリカの作家エド・マクベインの推理小説「キングの身代金」に影響されて生まれた作品。
貧富の差と社会の矛盾がもたらした誘拐事件を緊張感あふれるシーンの連続で描いている。
■出演:三船敏郎、仲代達矢、香川京子、三橋達也、山崎努
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